伝統的構法の承継
日本に古くから伝わる伝統構法を過去のものとせず、むしろ、積極的に将来に承継するために工学的に検証・整理したものを「伝統的構法」とよびます。主な特徴は、金物を使わずに継手や仕口で木材を組み上げる、柔軟性の高い「木組み」構造です。これが耐震性・耐久性・維持管理の面でも優れていることから、近年見直されています。また、長期的な住宅の維持にとって、墨付け・手刻みの加工技術の承継が重要です。近年はコンクリート基礎に頼らない石場建てが建築基準法に適合して建てられるので、足元の風通しの良さ・維持管理の容易さ・建設時のエネルギーの少なさで注目されています。
金物に頼らない伝統の仕口・継手による架構
住宅の構造は、昭和25年の建築基準法に「土台は、基礎に緊結しなければならない」とあることから、それ以前からの伝統構法と在来工法との違いの理解不足の側面があります。
伝統的構法の理解のために、日本の木造建築の伝統技術の承継に貢献された構造家の増田一眞氏の四字熟語(右記)はその参考になります。

飯能市の気候風土に適した住宅の実例
建築物省エネ法により住宅の省エネ性能が義務化される中、「気候風土適応住宅」は、日本の伝統的な住まいを次世代へ承継するための重要な特例措置です。通風や日射の制御など、地域の気候・風土・文化に根ざした先人の知恵を活かすことで、心地よい居住環境と、生産から廃棄に至るまでの低炭素・環境負荷低減を両立させることができます。 下の写真は、飯能市内の真壁造りの住宅です。地元の西川材を無垢で使い、職人が手刻みで建てたものですが、現時点では「告示786号第1項」の基準に該当しないため第2項の基準を制定しなければ建築できません。
気候風土適応住宅は、2015年の省エネ法制定時の附帯事項「地域の気候風土に対応した伝統的構法の建築物などの承継を可能とする仕組み」を目的として翌年制度化されました。当協議会では2016年から飯能市と協議を重ね、2018年には「飯能型気候風土適応住宅のガイドライン策定」を政策提言。翌年の「和の住まい推進リレーシンポジウム㏌飯能」開催を経て、早期の基準策定が期待されていました。
しかし、省エネ適合義務化の延長などの影響もあり、飯能市で「試行基準」が策定されたのは2023年12月1日でした。その後、2025年4月からの全住宅省エネ義務化が迫る中、埼玉県の試行基準の再検討に伴い、確定版の施行が見送られました。
現在、全国的に立ち遅れていますが、埼玉県および飯能市でも第2項の基準が未制定のままです。このため、告示786号第1項で認められた土壁・板壁等を除き、日本の伝統的な貫構造による真壁造り(告示1100号)が建築できないという状況が続いています。一方、令和8年度税制改正で気候風土適応住宅がローン減税の対象に追加されることや地域の文化である西川材と職人の技を守るためにも、早急な基準確定が求められています。